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【ひと】中村屋麹店・一紀さん-真咲さん

目次

中村屋麹店ご夫婦 店主 中村一紀さん・嫁 中村真咲さん)

運命的な出会いとなりました。

創業明治29年、およそ130年続く老舗、中村屋麹店。
中村屋麹店が位置する駿東郡清水町は、日本三大清流の一つ、柿田川が流れる湧水に恵まれたまち。
富士山の水が届くこのまちには、かつて、数多くの麹屋が存在したと言われているが、現在は、伝統製法を守り、機械に頼らず手作業を貫いた老舗3軒が残るのみとなった。

写真提供:三澤和也

旧東海道沿いに木造の趣ある建物を見つけることができる。
大正時代に建てられたその建物は、外観から見ても大切に時を刻んできたその価値を感じさせてくれる。
中村屋麹店には、暖簾などは特になく、建物に溶け込むようにある「こうじ製造所 中村屋老舗」を書かれた木製の看板のみ。初めてお店の入口をガラガラと空ける際にはちょっぴり勇気がいるかもしれません。

写真提供:三澤和也


中村屋麹店店主、中村一紀さんは、現在5代目。
店主は小学生から高校卒業までを今の地で過ごし、大学卒業後は都内で美術造形業を20年以上続け、結婚後は東京都国立市に暮らしていた。
2017年、先代が倒れたことを機に帰郷。明治から続くこの店の跡を継ぐ。

写真提供:下山光順


「自分の代でなくすわけにはいかない。」
麹屋を継ぐことに迷いはなかったそうだが、麹づくりのノウハウについては、子どものころから父の姿を当たり前のように見ていたが、一つ一つ失敗と成功を重ね、今やっと形になってきているところだという。

写真提供:下山光順

「うちは、材料屋だから」
扱う材料は、定番の米麹と麦麹の他、珍しい黒麹など全部で7種類ほどの麹と、少量ずつ樽で手作りしている麹調味料。
麹はすべて生麹で、穀物を水に浸けるところから始め、木の桶で蒸かしたあと手作業で麹菌をつけて杉の麹蓋に盛り、さらに1枚ずつ様子を見守りながら手入れをすること4日目、しっかり菌の育った麹ができあがる。

動画提供:下山光順

これを「麹蓋製法」という。

出来上がった麹が、店頭の棚に並んでいるところを見れるだけでも価値があるが、販売方法は、昔ながらの量り売りスタイルであるため、そこで店主や嫁と弾む会話も私にとっては最大の価値である。

写真提供:三澤和也

調味料は、しお麹やしょうゆ麹、ご当地調味料の金山寺みそ(米と小麦、炒り大豆で作った麹と野菜、塩を漬けたもの)、季節商品の梅みそや三升漬けなどが揃う。

使う野菜も、穀物と同様に国内産、地元の繋がりある方から頂くものを使うことが多い。
麹の甘みや野菜の鮮度を生かし控えめの塩で漬け、保存料などは使わない、家庭で食べ続けてきたままと同じものを店に並べている。

【中村屋麹店の魅力 店主 中村一紀さん・嫁 中村真咲さん】

私が、中村一紀さん・真咲さんご夫婦に出会ったのは、子どもたちが同級生で同じ部活、PTA活動が一緒だったという偶然の出会いからだった。

中村屋麹店の魅力は、ここまでにいくつか語ってきたが、最大の魅力はこのご夫婦だと私は思っている。

当時の私は、麹のこの字も知らず、中村屋麹店というお店が同じ町内にあることも知らずにいた。
麹ってなに?自分の興味のままに、お店がやっているかどうかも外からでは判断できない勇気のいる入口の扉を開け、客としてアポなしでお邪魔させてもらった。

出会ったときから、なにかおもしろいことになる!そう直感があった。
私からの提案は、その日のうちに即答快諾。
「まずはやってみましょう!」
そうして、「麹の会」として、塩麹醤油麹、ひしお麹、甘酒、味噌作り、味噌玉づくりなど、麹の基礎を私自身も楽しく学びながら企画をした。


このとき、まだ、ひととき百貨店は存在しておらず、ここから一緒に進めた体験と経験と感動が、ひととき百貨店の今に繋がっていると言っても過言ではない。

余談であるが、我が母曰く、中村屋麹店さんは、三島の母方の遠い親戚という奇跡的なご縁もあるようだが、真実かそうでないかは、調べようがないが、この心地よさは、薄くとも血が繋がっているのではないかと感じてしまう。

店に行けば、麹屋の奥の作業場で一緒にコーヒーを飲み、企画会議。優しい店主と嫁は話の長い私の話をいつもいじりながらおもしろがって聞いてくれる。商売を知らない私にたくさんのアドバイスと共に一緒に考えてくれる。ありがたい存在である。

麹屋という職業は、麹につきっきりで麹や天候と相談しながら世話をする時間がほとんどなため、その場にいながらできる趣味が増えるという。


先代はオーディオと絵画と酒。
店主も、漫画や美術、画集、動画配信サービスや、自転車を組んだりBMXやスケボーで怪我をしてみたりと趣味は多岐に渡る。


麹屋の嫁についても語りたい。
東京都立川市出身。店主と共に美術造形の仕事をしていたが出産を機に都心のメーカーへ転職。
すべての生活を切り離し麹屋の嫁という肩書きへ。
麹作りの傍ら、この土地やコミュニティと繋がる役割を担っている、というだけあって、どこに行くにも自転車でスイスイ、隙間時間を見つけては人に会いにいく。本人は人見知りだというが、そうは見えないエネルギーを感じる。

「超核家族育ちで、夢を売る商売しか経験がなく、人見知りがちだったが、古い商家で本家、生き物を扱う職につき急に知人友人が増えたことに、今でも自分がいちばん驚いている。」という。

「古いまま変わらないこの店のありかたを喜んでくれるのは、年輩のお客さんも、若いお客さんも同じで、これからもこのままあり続けていられたらと思う。


近所の人が日常の食生活のためにふらりと寄ってくれる店がいちばんの理想で、遠方からのお客さんへも配送先のお客さんへも同じ気持ちで接することができたらと思っている。


あまり仕事を大きくするつもりはないけれど、これからは麹の種類をより増やしてみるなどちょっとマニアック寄りにいけたら、と楽しい空想をしている。


この地域のコミュニティはみんなどこかで繋がっていて刺激が尽きないことと、自分をその輪に入れてくれた人たちへの感謝とのおかげで、色んなことに挑戦し続けていられると思っている。」と話してくれた。

「麹は生きてるから、子どもを育てているのと一緒。ちょっと目を離していいくらいのね。」

写真提供:下山光順

そう語る中村屋麹店ご夫婦と、これからも笑いの絶えないわくわくするコラボを築いていきたい。
これからも、至らないところ、ツッコミどころがたくさんの私ではありますが、末永いお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
ひととき百貨店立ち上げのきっかけを与えてくれてありがとう。出会えてよかった。

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記事を執筆しました!

藤井さやか 藤井さやか プロデューサー・オーナー店主

大切にしていること「一期一会」。「いちご」という法人を立ち上げ、人と関わる仕事をしています。人との出会い、人の想いに触れることが、旅や景色を楽しむように好きです。

百貨店が撤退し、郊外には大型ショッピングモールの建設が決定。「おまち」と呼ばれ、みんなの憧れだった沼津の商店街の衰退、と聞いても、当時の私は、自分ごととしては捉えられていない、まちのことなど何も知らない普通の主婦でした。

とあるきっかけから、商店街の人と出逢い、中にいる人たちの葛藤と諦めない未来への想いに触れることになります。自分にもなにかできないか、そこから、ご縁が紡がれていくように魅力的な人と出逢い、その想いに心が震え、その人、その場所のことがどんどん好きになっていきました。

興味のない場所だったはずが、いつのまにか安心できる自分の居場所になっていました。

自分の人生を楽しむこと、目の前の人を大切にすることが【楽しく豊かな未来を創る】と信じています。
感動しやすいワクワク星人。持ち前の運のよさと、直感を頼りに大好きなまちと、そこでの出会いを楽しみます!

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