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【ひと】似顔絵屋・長倉智美さん

ともぞうさんの描く似顔絵はweb上で何度も目にしたことがあり、ずっと昔から知っていた。

でも、ともぞうさんとはお会いしたことが無くて、事前の打ち合わせを文字でやり取りしつつも、お会いできる取材の日を実は楽しみにしていた。

※彼女の名前は『長倉智美』さん。『ともぞう』さんという愛称で呼ばれてるから尊敬と親しみを込めて今回は、そう呼ばせて頂こう。

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当日の取材の場所は『yadorigi』さん。

初めてお会いしたともぞうさんは、真っ赤なトップスとオーバーオールという着る人を選ぶ個性的なファッションに身を包み、でもそれが何の違和感も感じさせないくらい馴染んでいて、私は何故だか「本物だ。」と一瞬感じたような気がした。

ともぞうさんがいつ頃から絵を描いていて、なぜそれは似顔絵なのか。人が生業としている事のきっかけやルーツを聞けるのは、秘密の本を一ページずつ捲っていくようで、何だかドキドキする。

12月の気候とは思えない暖かさの中「はじめまして。」の挨拶もそこそこに、ともぞうさんと私は陽が差すカーペットに楽な姿勢で座り会話を始めた。

ともぞうさんが物心つく前に絵に触れた記憶。

ともぞうさんのお母さんが描いた漫画のイラストノートが家にあり、ともぞうさんが小さい頃、それを密かに見るのが大好きだったそう。お父さんはパソコンのハードを組み立てるのが好き。ジャンクPCを仕入れては修理して友達にあげていたという。

そんなクリエイティブな家庭環境で育ったから、ともぞうさんのDNAと創作力は、元々存在していたポテンシャルも相俟って絶対的運命のもと、上手い具合に成長していったのではないかと容易に想像が出来た。

小学校の頃は既に文集に添える似顔絵や色んなイラストを、クラスの友達から「描いて!」と頼まれる事が多かったそう。

「普通に描いてた。絵を描いて欲しい子が列で並んで。自分の絵として描くというよりは、人の気持ちに応えたいから描いていた。頼まれたら描く。だからいつも自分の手元に作品は残らないの。」

「普通に描いていた。」という言葉に私は驚いた。

大体の人間は他人に依頼されるような絵を『普通』には描けない。でもともぞうさんにとっては普通のこと。

呼吸をするように絵を描く。それを人は才能というのではないだろうか。無意識レベルの中、既にともぞうさんは幼くして自分の特性を掴んでは、自由に楽しんでいる印象だった。

だからそのまま、好きが高じて芸術大学に進学したのも自然な流れだったのだろう。

それでも絵が上手い人が「普通に」大勢いる環境に身を置き、イラストを描く上での基礎デッサンなど学ぶにつれ「上手いとは何か」「上手いを基準にするのではなく、自分をアピールするにはどうしたらいいか。」などの壁に少なからずぶつかったのだと、ともぞうさんは言う。

「デザインというよりはデッサン。私は手描きの油絵コースだった。綺麗な線を描くというよりは、あの黒の重厚な感じに惹かれて。黑ければ黒い程カッコイイみたいな。先の事はあまり考えず、その時やりたいと思ったことをやった。」

「最近はipadも使って描いたりするけど、それでも基本手描きかな。紙がデジタルになっただけで。画面が傷だらけになるくらい手描きの線だよ笑。だから娘の方がipadの機能を覚えるのが上手で『まだそんな描き方してるの?』とか言われる笑。」ともぞうさんの手描き愛が自ずと伝わってきて、笑いと共にその場がふっと和んだ。

大学の就職を考える頃になってやっぱり絵に関わる仕事がしたいと思い、教員免許を取得したので私立の教員登録をした。ご縁が繋がり、結婚するまで美術の教員として高校で数年間を勤めた。

主婦となり子育てをしながらも、絵に関わる仕事をいつかしたいという思いは変わらなかったという。

そんな時、子供の幼稚園のイベント出店にママ友から誘われたのをきっかけに、一枚500円の似顔絵を商品として出品することになったともぞうさん。

「イラストなんか買う人いるかな?」と出品した自身が懐疑的なのを余所に、予想以上の人が来てくださったそうだ。

長年、絵の世界で生きてきたともぞうさんでさえ、初めて自分の絵でお金を頂く際のペンの先は、緊張で震えて気が気でなかったと当時を振り返り、懐かしそうに笑った。

そんな地道な活動が人伝に広がりファンが徐々に増え、その後本格的なイベント出店などに続いていく事となる。

現在のイベントでの価格は1人1000円~、所要時間は1人大体20分。5人家族でも1時間程で仕上げるそう。
似顔絵と言えば先入観でその時間はまるっと、お客様と対面で筆を走らせるのもだと思っていたが、どうやらともぞうさんのスタイルは違うようだ。

「基本は写真を頂く感じかな。だからその場にいない人も写真があれば描ける。人物以外にもペットとか雑貨とかでも大丈夫。」

写真とは一瞬の産物。1枚の写真から拾える平面的な表情は勿論1つなのに、ともぞうさんの描く絵からは、不思議とお客様と何分も楽しい会話をして捉えたかような、立体的な描写の豊かさが感じられる。どうしてだろう、答えはすぐ後のともぞうさんの言葉にあった。

「お客様もそのイベントを楽しみに来ているから、大切な時間をイラストを描くために足止めしてしまっては悪いなと思って。出来上がるまでどうぞ他のブースで楽しんできてくださいって思う。私も人見知りだし、対面して描くとその場を楽しくしようとそちらに意識が向いてしまうから。」

「基本は『可愛く』がテーマかな。男の人も気持ち可愛くしちゃう。でもちょっとココこうしてとか、出来る範囲で要望には応えたい。そういうのも全然OK。笑ってない写真はね、実は少し笑顔で描くの笑。」


ともぞうさんは小さい頃から頼まれたら描くと言ってた。それは自分がしたことによって相手が喜んでくれるからだという。

ともぞうさんの「絵を描く」という行動の主軸は、常に「目の前の人が楽しんで喜んでいる姿」の中にあったのだ。絵を描くだけじゃない。共有しているその時間さえもまるごと全部。

だからともぞうさんの描く絵にはきっと、その優しい想いのかけらも含まれているのだろう、一枚の写真から想像を膨らませて描く人々の幸せそうな笑顔が、柔らかく印象的に記憶される。

そんな『写真を見て描く』スタイルのともぞうさんに、今回は取材撮影用の「対面似顔絵」をお願いさせて頂いた。

「話すことに意識が向いてしまう。」

確かに私は先ほど、そう耳にした。けれどもお客様を前に、ともぞうさんが取材用だからと無理したり取り繕ったりしていないのは、初対面の私にも明らかだった。

絵を描くペンを走らせる滑らかさと同じくらいの感覚で、場の空気を笑顔と会話でスムーズに盛り上げているともぞうさんがそこにはいたのだ。ともぞうさん自身がもしその器用さに気づいているのだとしたら、何という粋な謙遜だろう。人として惚れてしまいそう、、いやもう、時すでに遅かったかもしれない。

「大学在学中は演劇にはまっていてね。演劇のチラシを描いてと頼まれて油絵でイラストを描いて、卒業制作も結局それを元に人物のイラストを描いたんだ。自分が描きたいとかじゃなくて頼まれたやつだからね。みんなが喜ぶからさ。」

それが当たり前のように屈託なくともぞうさんは話す。

クリエイティブな世界に身を置いて、自分の情熱や思惑よりも周りの幸せを思って動けること、どれだけ軽やかなマインドなんだろうと、ともぞうさんを少し羨ましくも思った。自分の方向性と拘りが足枷となり、思う様に動けなくなる人を沢山知っている。かくいう私もその一人だったりする。

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周りの人に喜んでもらう事をモットーに、ともぞうさんの似顔絵イラストが仕事になってから早10年だという。

今回取材で初めてお会いした私でさえ、知人のSNSアイコンがともぞうさんのイラストだなと認識することが、片手では収まらない。それだけともぞうさんのイラストが、この10年で人々や地域に愛され着実に根付いている証拠でもある。

そんなともぞうさんに、今後の目標や展望があるのかがふと気になって、取材の最後に何となく聞いてみることにした。

「そういうの思いついたりするんだけどすぐ忘れちゃう。やりたい事はあるんだけどね、その日を生きてる感じ。夢についてとか内面を言葉にするワークショップも苦手で。。今日一日が楽しかったらそれでいいかな。」

それはもっともな答えだった。今日しか人間は生きられない。

私を含め、朧げな未来に夢を馳せがちな多くの人に、地に足を着けて今を楽しく生きる事の大切さを説いて欲しいと、そうやって生きてきたともぞうさんの言葉なら素直に受け止められそうな気がして、実は少し期待して質問を投げかけたから嬉しかった。

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『周りの人に喜んでもらいながら今を楽しむ。』

言葉にすると哲学書の1文の様なこの心掛けが、ともぞうさんの絵には誰の目にもわかりやすく、可愛いイラストで落とし込まれているのだから、表現とは実に面白い。

描いてもらった似顔絵を部屋に飾っておいたら、それを見る度に幸せな気持ちにしかならない。そんな事を思わせてくれるともぞうさんとの出会いに、取材を通して心から感謝した。


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記事を執筆しました!

chaco chaco Creative director

『ひととき百貨店』WEB・ディレクション・写真・動画・メディアツール制作等、表に出ないクロコ担。好きな色はモノトーン。何でも白黒つけたがる性格。

万年一匹狼。動物占いも狼。感情より論理派なので冷たい印象を与えがちらしいですが悪気はない。ただ目の前のタスクをこなすことにやりがいを感じて生きている。

猫と猫のようなツンデレの人が好き。

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