小野銅工店の小野裕康さんの、銅や真鍮をかなづちでたたいて作るカトラリーの作りを体験しました。
小野さんは、小野銅工店の3代目で、1974年から屋根葺き工(屋根材を加工し、屋根に敷き詰め、固定する専門職)の職人をしていました。
60歳を過ぎて、屋根での作業は身体的に危険になったため、独学で銅や真鍮を加工する勉強を始めました。
今は、カップ、スプーン、バッジなど様々な銅・真鍮製品の製作と販売をする傍ら、老若男女問わず、銅や真鍮製品の魅力と自分で作る楽しさを伝えています。
小野さんの自己紹介で、少し緊張がほぐれた後、カトラリーづくりへ。
まず、銅や真鍮で作られた何種類かのカトラリーの見本から、自分の作りたいものを選びます。
銅はアンティークのような趣きがあり、真鍮は金色の輝きが美しい金属です。
それぞれの金属の特徴について教えていただきながら、また、自分が作ったものを実際に使うことを想像しながら、どれを材料にして何を作るのか、迷いながら選ぶのもとても楽しい工程です。
私は、少し迷ったものの真鍮のカレースプーンを選びましたが、たっぷり時間をかけ、悩みに悩み抜いて選ぶ参加者さんもいらっしゃいました。スプーンやフォークの形にカットされている銅や真鍮の平たい板を手に取り、みなさん、わくわくとした表情で小野さんの話に耳を傾けていました。
初めて見るような道具も幾つかあり、それも、大変興味深いものでした。
丸太を作業台にし、最初はおっかなびっくり作業していましたが、慣れてくると、大人も子どももみなさん夢中になって取り組んでいました。
おしゃべりを楽しみながら進める方、
まるで職人のように黙々と取り組む方、
周りの様子を見ながら慎重にやる方、
叩き方が思い切りのよい方、そうでない方、
などなど・・・
「同じものをつくるにしても、いろいろと個性がでますね」
小野さんは、そうおっしゃりながら、みなさんの様子を優しく見守り、作業をフォローしてくださいました。
カトラリーの柄の部分に名まえ(アルファベット)の刻印もできる・・・ということで、1文字1文字、文字の棒を金づちで叩いて刻印。
金属の板で練習して、コツを掴んでから、いざ本番!
何度も叩くとぶれる原因になるので、なるべく、思い切ってガンと強めに、少ない回数で叩きます。
私は自分の名前を刻印しましたが、中には、好きな単語を刻印された方もいらっしゃいました。
思い入れのある単語にしたり、だれかにプレゼントをする場合なら「THANK YOU」など、何か好きなメッセージを刻印したりしてもよいかもしれません。
みなさん、逆さまに刻印してしまったり、文字がぶれてしまったりしてたびたび雄たけびがあがることも。
その度に、
「それも「味」です」
と小野さんがひとこと。
私も、きっちりきれいに刻印しようと意気込んだ割に、文字と文字の間に思ったよりも隙間ができてしまったり、横一列のはずがなんとなく高低差がでてしまったりしましたが、
小野さんの「味」のひとことで、
「キレイにできすぎてるより、逆に愛着増すかも・・・」
と思えるから不思議(笑)
小野さんの言葉マジックと手作りの良さだなぁ。と感じました。
出来上がったカレースプーンを愛おしい気持ちで眺めながら
「大切に使おう」
と思いました。
みなさん、それぞれ個性あふれるオリジナルの素敵なカトラリーを完成させていました。
「愛着を感じる!」
と大変満足している様でした。
小野さんからは、銅と真鍮製品のお手入れの方法を教えていただき、
「銅や真鍮製品は、経年変化が楽しめます。正しくお手入れすれば長く使うことができます。大切に使ってください。」
とお話がありました。
実は私は、小野さんのワークショップで自分のカレースプーンを作った後、家族全員分を揃えたくなり、再び子どもたちを誘って、家族全員分のカレースプーンを揃えました。
子どもたちも自分が作ったカレースプーンを大変気に入っていました。
その日の夜はカレーにしたことは言うまでもありません(笑)
自らの手で丁寧に作った、世界にひとつだけの愛着のあるお気に入りのカトラリーを日常に。
日が経つほどに味を増す、銅・真鍮製品。
使う度に、体験の楽しい思い出とともに、心豊かな「ひととき」を味わうことができるでしょう。
小野さんのワークショップは、小野銅工店の作業場でも体験可能です。
いろいろな道具や作品をみることができ、作業場の雰囲気も感じ取ることができて、とても魅力的です。
随時予約を受け付けております。ご興味のある方は、「お問い合わせフォーム」よりお問い合わせください。