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【ひと】大瀬まつりは漁師のお正月・小林大介さん

沼津市西浦江梨にある大瀬神社で毎年4月4日におこなわれる大瀬まつり。

「天下の奇祭」とも呼ばれているこのお祭りですが、今年は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、規模を縮小して開催されました。


前日は準備の日。地域の皆さんは、朝8時に公民館に集合。

まずは竹の切り出しから。なるべく丈夫できれいな竹を選んで運びます。


いっぽう、海では船の飾りつけ。


江梨地区のリーダーは真正丸の小林大介さん。

17歳から海の仕事の世界に入り、家族代々この江梨の大瀬まつりの船はこの真正丸がつとめてきました。


今年はあいにくの雨模様でしたが、そんなことは全く気にせず、和気藹々と準備をする皆さん。

切り出してきた竹に、ひとつひとつ丁寧に大漁旗を結びつけていきます。

地域の皆さんの協力があってこそできることだと、小林さんは話してくれました。


そして迎えた当日。この日も雨が降っていましたが、地域の皆さんたちが続々と船のまわりに集まってきます。

「大瀬まつりはね、漁師にとっての正月だから。それまでなかなか上がりきらなかった水温が、ここらへんから徐々に上がって、本格的に漁が始まるタイミングでもある。”さあ、ここから頑張るぞ”という気合いを入れる時。だから、なにがあってもこの日だけは欠かせないんだよね。これは親父から肌で教わった感覚かもしれない」


出港前に、宮司さんによるお祓い。一気に身が引き締まります。


勇み踊りの子供たちも乗船します。


そしていよいよ出港。

お囃子とともに、子供たちの勇み踊りが披露されます。雨にも関わらず、子供たち自らの希望で、今回は、2回の勇み踊りがおこなわれました。


大介さん:

いやー、 もうね、めちゃめちゃ嬉しかったですよ。あんなに寒い中だったのに、子供たちが「やりたい!」って言うのを聞いたときは、「やっててよかったー」と本当に思いました。


子供たちにね、この日を覚えていて欲しいんです。

大人になって、たとえこの土地に住んでいなかったとしても、4月4日になると「大瀬まつりで踊ったなあ」と思い出してくれたらそれだけで嬉しい。

女の子は、たとえどこかにお嫁さんに行ったとしても、4月4日に子供を連れて帰ってきてくれたりとかしたら、もう最高じゃない?「おかあさんもね、ああいうふうに踊ったのよ」って子供に話したりとか。

こういうのって、頭で考えることじゃなくて、感覚で覚えてることだから。とくに子供の頃の記憶は。

僕自身もそうだからね。毎年4月4日が近づくと、全身でワクワクしてくる 笑。


西浦の美しい景色を見ながら、船は大瀬神社に向かいます。


いつもなら、船の上では盛大な宴会のはずなんですけど・・・。

今回は、ささやかながらも神様に感謝のお神酒を捧げます。


大瀬神社に到着。

他の地域の船も、続々と集まっています。

各地域から大瀬神社に集結した船たち。

いつもの年よりも飾り付けは控えめなものの、やはりどの船にとっても、年に一度のこの大瀬まつりは欠かせない大切な日。

どの船からもそんな空気がひしひしと伝わってきます。



神社に着くと、すぐに本殿へ。丁寧にお供物を運びます。


そして、みんなで参拝。

真正丸からは、一列目に船長と長男、次男が一列に並んで、今年一年の豊漁と安全を神様に祈願しました。

「なんて言われたかは全く覚えていないんだけれど。大瀬まつりの大切さは親父から肌で教わったから、俺もふたりの息子たちにも、同じように伝えないといけないと思う。だから、今年は長男に真ん中で参拝してもらったんだよ」

と、船長の小林大介さんは話してくれました。


雨のなか、厳かにとりおこなわれた神事。

「まるでこの雨は、昨今の世界情勢や疫病による混乱を、神様が清めようとしてくれているようです」


−最近、海や漁の状況に変化などはありますか?

そうだね、数十年前にくらべたら、だいぶ魚が採れる量は減ったよね。いろんな原因が言われているけれど、はっきりしたことはよく分からない。


でもね、実は本音を言うとそんなに深刻に考えてもいないの。

これまでずっとこの地域は、こうして神様に守られてやってきた。もちろん、それに甘んじているということではなくて、日々、新しい工夫なんかもしてはいるけれど。

僕たちはね、自然に身を委ねて生きているから。


参拝を終えて、それぞれの船がまたそれぞれの港に帰っていきます。

次の世代に大切なことを言葉以外の感覚で伝えつつ、家族や地域の人たちと共に、自然に身を委ねながら生きていく、この地域の素晴らしさと美しさ。

ピンク色の桜がポツンポツンと咲いている美しい山々に囲まれたこの風景を、いつもとは違う船の上から眺めながら、そんなことを感じた、大瀬まつりの一日でした。

真正丸
静岡県沼津市西浦江梨1000-1
website : http://shinsho-maru.main.jp/
公式youtube channel : https://www.youtube.com/channel/UC2asqWmsjB85bQnsgkEyugg



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記事を執筆しました!

「海の近くに住みたい」という夢とともに、気づいたらふわっと沼津に移住してました 笑。

毎⽇、⿃の声で⽬覚め、真っ⻘な海にキュンとして、夜は満天の星空の下で眠る⽣活がなにより幸せな沼津ライフ。

とくに沼津の南エリア(三浦・⼾⽥地区)がもつ、無限⼤のポテンシャルを感じることから、 「Go slow to go fast. (急ぐなら、ゆっくりいこう)」を philosophy として、「ヌマヅノミナミ」というサイトを運営しています。

好きなものは「変⼈さん」。

少しくらい、いや壮⼤に普通の道から外れてしまっていても気にせず、いやむしろ外れていることすら気づかずに、⾃分の信じた道を楽しく軽やかに⽣きているキュートな⼈たち。そんな愛すべき変⼈さんが⼤好きで、とにかく会ってお話を聞いてみたい!という動機が、⽣きる原動⼒です。

常に、いろんなものに囚われず、価値観をぶっこわしながら⽣きていたい。 ふわっとしてるとよく⾔われますが、実はかなりの頑固者です。

「事実は小説より奇なり」

ひとりひとりの人生のストーリーは、小説よりも遥かに予測不能で面白い。ひととき百貨店を通して、⼀⼈でも多くの方のストーリーにであえたら嬉しいです。

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